文面 甲子園に、恋をした
side N
またさほど眠れずに朝を迎えた。
今日の夜、俺はアイツに抱かれる。
仕事をいつも通りこなしながら考えていた。
大野さんのこと。
潤くんのこと。
相葉さんのこと。
翔くんのこと。
俺が俺でなくなる前にみんなでバカみたいに笑って楽しく過ごしたかったなって。
アイツに抱かれたらもう、以前の自分には戻れない気がするから。
いつもよりも早く過ぎ行く時間。
おかしなほど順調に収録は進む。
取材も、撮影も。
普段より順調に終わった。
（終わった。）
したくないけど、佐竹にメールをいれた。
すぐに返ってくる返事。
（○○スタジオで撮影でした。）
皮肉にも同じ建物の中。
なんだよ、それ。
こうなる運命ってことか。
悲しくも笑えてくる。
（俺も今そこにいる。タクシーで俺んちで。）
マネージャーにタクシーで帰るから、と伝えておいた。
（すぐ行けますよ。）
（外にいる。）
（わかりました。たっぷり愛してあげますよ。）
そんな文面には返事をしなかった。
気持ち悪い。
愛されたって俺の心はやんねぇよ。
スタジオの外、タクシーに乗って数分。
佐竹が出てきた。
あらかじめ伝えておいた行き先に向かうタクシー。
俺は車のなか、めいっぱい逃げられるだけ端に寄り佐竹から離れた。
無言の車内、揺られながら帰る道。
もっと遠ければいいのにって思うくらい、すいすいとマンションについてしまった。
運転手に金を払い降りて、何も言わずに中へと行く。
その後ろからついてくる佐竹。
体はイヤだ、イヤだ、と拒んでいる。
それでも決めてしまったこと。
もう引き返せない。
「上がれ。」
玄関を開けて俺は振り返ることもなく靴を脱いで中に入っていった。
上着と荷物をテキトーにその辺に置いてただ立ち尽くす。
俺から動くことなどあり得ないから。
「二宮さん、、」
そんな俺を佐竹は後ろから抱きすくめる。
ぞわっと背中に走る悪寒。
「しゃ、、シャワーは？」
「いりません。」
「いや、、俺、浴びたい、、」
「だめです」
「なんでだよっ」
「貴方のすべてがほしいから」
俺を抱いてた腕に力が入り、俺はくるりと向きを変えさせられた。
佐竹と対峙するような形で見つめられ近づいてくるのがわかった。
「、、っ、」
あと数㎝のところで思わず顔を背ける。
「、、乱暴にはしたくないんですよ」
「、、悪い」
出来れば俺だって痛いのは嫌だ。
でも、、、大野さんとのキスや温もり、、消したくないだ。
勝手に拒絶するんだよ。
俺の気持ちなんかお構いなしに今度は頬を挟まれて近付く。
「二宮さん、、、」
「、、っ！やっ！」
またもその手から逃げ、全力で抵抗した。
だけど、俺の力なんて無力。
意図も簡単にねじ伏せられてラグの上に押し倒された。
「貴方が悪いんですよ？」
俺の両手を掴んで跨がって今度こそ動けない。
キスを諦めた佐竹が俺の首筋に顔を埋めた。
「ぃやだ！」
大野さん、、、助けて！
「おお、、」
「ニノ！！」
思わず大野さんの名前を呼びそうになったとき、バターンっとすごい音をたてて開いた向こうに息を切らせた大野さんが立っていた。
文面さえあれば
今からnanaを迎えに行きます
近くのスーパーで、明日の朝食べる物買ったとこです
今日は時間が経つに連れ、気分がどんどん下ってます
すごく辛くなり、なんか何やっても上手くいかないなぁって、勝手に落ち込んでます
kanonの夕飯を作り、出てきたんだけど、今朝、薬飲んだっけ？って、思いました
飲んでないかもです
そんな事もプラスされ、気分が乗らない私です
nanaが帰ってくるとまた、便の片付けを毎日しながら、行きていくんだなぁって、暗い気持ちになります
前はもっと、がんばろーって気になったんだけど、この頃這い上がるのにすぐ落ちたり、自分も不安定になってるような気がします
努力しても、どう考えてもどうにもならない気持ちって、どうしたらいいものなの？
いつかこれを読んで、なんだこの暗い文面は
って、笑い飛ばせるといいなー