くう ねる あそぶ キャンプ

キャンプシンクロヒーロー

職場のバイトの男の子１６歳は、物凄く物静かで良い子の代表みたいな好青年である。
うちの息子がこんな感じになってくれたら・・・うちの娘の夫になる人がこんな男の子やったらエエやんかいさ～と思うような感じの良い子である。

勤めて１年には満たないのでるが、バイトに来る時は必ず母親が店の中まで送って来る。
例えばそこに店長なり私なりがいたとして、一応は挨拶をするわけであるが、母親は笑みを返す事はない。
チラリとこちらを見て去る。
そしてバイトが終わる時間になると、母親が店の中まで迎えに来る。

今は夏休みなので、学生バイト達は本来の契約以上の時間を働き、お金を稼ぎたがる。
店側としても多忙な時期はそれが助かるわけであるが、この彼だけは例外で、週４時間以上は働かない。
母親が許可を出さないのである。

先日、どうしても人手が足りずに彼に声をかけてみたが、「母親に聞いてみないと」と言い、翌日「母親が駄目だというので・・」と断って来た。
同じ歳の息子を持つ店長は「お母さんがくっつき過ぎや・・」と心配している。

そんな今日、彼が午後１２時にバイトに来るはずなのに来なかった。
そこで店長は自宅に電話をかけてみた（今の高校生は皆スマートフォンを持っているが、彼だけは持っていない）。
母親が電話に出た為、店長が「○○の店長の・・・」と名乗り、理由を説明した後で彼が自宅にいるか？と聞いた。
すると母親は何故か不機嫌になり、「どこの誰か分からぬ人に、息子の事を教えない」と言った。

そこで店長は母親に信用してもらうため、お店の電話番号に母親から折り返しかけてもらい、本当にこのお店から電話をかけている事で信用してもらおうとしたが、何せ、母親が「何故に私の貴重な時間を割かねばならないのか？」と怒った。

店長は「あなたの貴重な時間を邪魔して申し訳ないが、しかし息子さんがバイトに来るはずの所を来ていないので、本人から連絡をもらいたい」と丁寧に伝えた。
結局、本人からすぐに電話があり、単にバイト日を間違えていただけだったのであるが、今後、彼と連絡などを取る際、非常に面倒になるな・・と誰もが思ったわけである。

休憩室で店長と私と１人のバイトで「オカンが厄介やな」と話していると、彼を小学校時代から知るバイトの女の子が倉庫内でそれを聞いていたらしく、「ダニエル（彼の名）やろ？彼は母親がどんな女の子も彼に寄せ付けないよう、小さい時から目を光らせてんねん」と言った。

例えば幼稚園や小学１年の頃に行った遠足などでも、友達と手を繋いで歩かねばならない時やバスで横に座るクラスメイトは、絶対に男子でなければならなかったらしい。
夏休み前に学校の講堂で行われる子供ディスコ大会なども「女の子がいるから」と参加させてもらえなかった。
部活も駄目で、唯一出来たのはボーイスカウトだけである。
これならキャンプに行く際も男子だけで安心だったのだろう。

今は高校生になり、例えばクラスや学校行事で女子も交えたグループで何かをする際、連絡係が女子であると、ダニエルに電話を取り次いでもらえないため、男子がやらねばならないのだそうで、こうなると、いよいよ「ダニエル、ちょっと変やな・・」という噂は誰もが知る事となってしまったらしい。

店長が「せやけど私の声なんか、どうきいても５０歳過ぎのババア声やで。それでもアカンか！！」と言った。
よほど女性を寄せ付けたくないのだろうが、「性」に偏った遮断をして良いのか否か・・・他人の子育てであるから何とも言えない店長と私・・

一枚のキャンプを買うよりも 売ることのおもしろさを知った。